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仏印にきて

私たちが皆様の歓呼の声に送られて懐かしの故国を離れてから早くも一年が経過いたしましたが、輝かしい紀元2,600年の9月26日皇軍未踏の地、仏印(フランス領インドシナ)に進駐いたしました。御存知のように進駐後各部隊は直接間接にその任務に邁進して多大の戦果を収めております。
(略)
フランスの支配下に入ってから仏印民衆は幸福になったでしょうか。私たちの見たところでは決して良いとはいえません。もちろんハノイに行ってもハイフォンでもフランス街はきれいです。坦々としてどこまでも続く自動車道路、ハノイの鉄橋など私たちの目を驚かすものがありますが、一度安南人(中部ベトナム)の部落に足を踏み入れますとまた驚かされます。椰子の葉で葺いた屋根、竹で編んだ壁、戸、みな竹でできています。小さな家は家と言うより大きな籠といった感じです。そしていつ作ったかわからない色の褪めた接ぎだらけの着物をきて素足え歩き回っています。
今(11月20日)は稲刈りの最中です。米は仏印貿易の第一を占めていて年2,3回とれるらしい。苗代にはもう次の稲が青く芽をふいています。奥地にゆけばバナナ、パインアップルを始め、野菜類もたくさんでき、農業者は相当裕福なくらしができる筈です。それなのに安南人はどうしてこんな惨めな生活をしているかと考えると実に安南人は憐れです。(略)
戦地にきて特に感じたことは、お国のありがたさです。そこで銃後のみなさまにお願いしたいことは、こういう外地とくらべてお国のありがたさをよく知っていただきたいのです。私は日本人が生まれながら日本に暮らしているためにお国のありがたさが空気や水と同じにあまりに身近にあるためよくわからないのではないかと思います。
そうでなければあの買い溜めだの闇取引などというような忌まわしいことはないと思います。もちろん一方銃後の各団体は非常に張り切って長期戦に備え、時艱克服に邁進していられることは私たちも非常に力強く感じます。
この頃しばらく郵便もこず、新聞も見られず、内地の様子がよくわかりません。戦地の者が内地の様子を知り、内地の方が戦地の様子を知って、銃後と戦地がもっとしっかり手を握らなければならないのではないでしょうか。私たちも内地から便りの来た時はみな小躍りして喜び、一日うきうきとして仕事にはげむことができます。

はるかに皆様の御健闘を祈ります
(仏印 櫻田部隊 櫻井秀雄)


 

第149号 昭和16年1月1日

目次

  • 広告「理研ビタス錠」
  • 勅題「漁村曙」-千葉県九十九里浜(写真)
  • 艦上に迎える二千六百一年(写真短信)
  • 無限軌道は若土を踏んで(写真短信)
  • 写真特集:堪えて忍んで産むのだ兵器-陸軍兵器廠
  • ゴムの木は海南島に芽をふいた(写真記事)
  • 大陸に建設第五年(写真記事)
  • 今夜は慰問袋を作りましょう(写真短信)
  • 事変第五年を迎う
  • さあ、実践の年だ -進む大政翼賛会
  • 翼賛一家・大和家の家族 うちのお正月/コント 大和家の隣組(イラスト付き)
  • 前線より銃後へ
  • 陣中文芸(軍人文芸作品)
  • 写真週報問答(質問コーナー)
  • 一月のカレンダー(写真付き)
  • 第一回臨時中央協力会議(写真短信)
  • 翼賛の怒濤 翼賛の汗 -挙村一致の愛知県神戸村(写真短信)
  • 海外通信 美と能率と 働くドイツ婦人服(写真短信)
  • 子宝の春(写真記事)
  • 南方戦線忙中閑あり(写真記事)
  • 戦地の兵隊さんから(イラスト・写真短信)
  • 隣組の迎春常会 -東京世田谷(写真短信)
  • 新体制の春(マンガ・イラスト)
  • 復習室
  • 広告「明治チョコレート」
  • 広告「錠剤わかもと」

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【南仏進駐部隊】戦地からの便り【検閲済み?】

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