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工事進む関門隧道

総工費1,600万円
わが国最初の海底トンネル、本州と九州とをつなぐ関門海底トンネルは昭和11年9月起工以来、昭和16年完成をめざして工事は着々進行している。
本州と九州の間はわずか600メートル
関門海峡を隔ててほんの指呼の間であり、両方からのおびただしい交通輸送量は日々増加してゆくが、現在では輸送施設として連絡船と貨物航送船があるだけで非常にまだるっこしい思いをしている。
下関と門司ーーこの両地の間に鉄道が直通連絡をすることは、こういうまだるっこしさを解決するだけでなく、産業と国防の点からも重大な意味をもってくる。この関門連絡線の新設は、その提唱されること久しく、トンネルあるいは橋梁による連絡の計測調査がいくどか繰り返されながら、今日まで実現をみなかったが、最近の九州・本州間の交通運輸量の急激な増加と四囲の情勢はついにその急速な実現を要望するに至り、昭和11年9月19日、関門海底トンネル開削の第一鍬が打ち込まれ、この歴史的大工事は軌道についた。

以後工事は着々進み、順調に行けば昭和16年には完成の予定で、鹿児島行、長崎行の列車が東京駅のホームから発車するのも両三年後には実現することになる。
トンネル開通のもたらす利益はたくさんあるが、旅客に対しては連絡時間が30分余り短縮され二回も乗り換える面倒が省かれ、貨物に対しては平均10時間程短縮されることになる。
連絡コースは下関駅の入口から別れて小瀬戸の海面を埋立てて新下関駅を作り、ここから彦島に渡り左折して直ちにトンネルになって20/1000の勾配で下り込み、海底中央部約300メートルばかりを2/1000の勾配とし、再び20/1000の勾配で上りながら右折し、大里駅構内に出て鹿児島本線に接続する新設線路の総延長は6.7キロメートル、トンネルの総延長3.6キロメートル、そのうち1.2キロメートルが本当の海底トンネルである。第一期として現在工事中のトンネルは、単線式一線で、大きさは内径5.7メートルとなっている。
海底トンネル付近の地質は複雑をきわめ、彦島側は硯石統層に属する凝灰岩であり、大里側は花崗岩でその上部は完全に風化作用を受け真砂土または粘度化した地層となり、海峡中央付近は硬質の変成岩となっている。一方海峡の中央部には2,3カ所の断層があり、彦島側の硯石統層も堅くはあるが亀裂が多く、かなりの湧水がともない、大里側の風化土は崩壊湧水の恐れが多いので、工事上の苦心は非常なものがある。
工事方法は地質の変化に応じて掘削方法を変えだいたい彦島側の岩盤は普通の山岳トンネルのいわゆる普通工法により、湧水を防ぐためにセメント注入をし、大里側の花崗岩の風化地帯はシールド(盾構)工法により圧搾空気で湧水を阻止しつつ進んでゆく。
このトンネルには本トンネルの外に試掘トンネル(通称豆トンネル)というのがあって、本トンネル掘削に一歩先んじて本トンネルの下方に掘削する。これは海底地質の詳細を知り、断層の位置、湧水の程度等を確かめ本トンネル掘削の指針とするとともに、中間で両方から本トンネルとの連絡をとって工事の進捗をはかり、また工事中の排水をこの豆トンネルからするためである。なお工事完成後も排水路、通信線等の収容に利用されるなど重大な役目を持っている。
工事は目下彦島、大里両側から一歩一歩進められているが、豆トンネルは全長1.3キロメートルのうちすでに約800メートルほど掘進し、大里側のシールドも本年早々から作業が開始された。

写真上左ページ右上3枚>
彦島口から豆トンネルを260メートル奥に入ると湧水箇所を水平にボーリングしている。

写真上左ページ右下>
海底地層の神秘はまず豆トンネル掘削によって征服されてゆく。

写真上左ページ左下>
本トンネル工事もいよいよ白熱化してきた。鉄の支保工(アーチ型の支え)が海底部岩盤を徐々に切りひろげてゆく。

写真下右ページ右上>
本トンネルの竪坑をおりると取付トンネル(直接海底部でない)がずっと彦島の方に続いている。

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地盤が悪いので大里口豆トンネル竪坑に井筒が沈下される。

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ケイソン病治療室。トンネル坑内に働く坑夫たちのため地下高気圧と地上の普通の気圧状態との間にいくつかの気圧調節の室が設けられてケイソン病を予防しているが万一患者が出た場合には、ボイラーのような一室に密閉して気圧の調節を行い治療す。

写真下右ページ左>
大里口の工事現場。

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大里口豆トンネル内の試掘竪坑。

写真下左ページ右上>
花崗岩の中も豆トンネルは掘削されてゆく。裸電球が不気味に光る。大里口から40メートル奥。

写真下左ページ右下>
試掘坑ポンプ室。協力なポンプがトンネルの湧水を地上に押し上げ排水する。

写真下左ページ左・左上>
大里口本トンネル竪坑にケイソン用材料が取り付けられる。

写真下左ページ左下>
取り付けられたケイソンの中で掘削作業は間断なく進む。試作トンネルの総延長1.3キロメートルのうち約3/4はすでに征服されたのだ。

第52号 昭和14年2月15日

目次

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