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タイと象 情報局次長 奥村喜和男

タイとビルマの国境付近は真昼間でも暗いほどの大変な密林地帯で、したがって道も悪く、兵隊さんが進撃するにも、兵隊さんに必要な糧食や弾薬を運ぶにも、非常な難儀をされたことと思われます。

ところが、皇軍のこの難儀を大いに助けてくれたものにタイ国の象があります。新聞にも、日本の兵隊さんが象にうちまたがり、荷物をたくさん背負わせて密林を進んでいく写真が出ていましたが、動物園でしか見たことのない我々にも、あの大きな体、何物にも負けないあの力なら、密林も悪路もなんのその強引に障害物をぶっ倒し乗り越えていけたろうと想像ができます。

タイの名産にはチークという良材がありますが、象もまたタイの名産であります。日本では象はサーカスか動物園の見世物に限っていますが、タイではどうしてトラックよりも馬車よりも重要な運搬の原動力なのです。ところが世界の搾取者イギリスはタイでも横暴を極めてイギリス人の会社が象に関する一切の実権を握って象を独占し、これによってタイの名産であるチーク材を独占していたのであります。

しかし一度皇軍がタイに平和進駐するに及んでタイの象はすべてタイの手に帰りました。そして日タイ共同作戦の建前からこれらの象部隊も欣然皇軍進撃のお手伝いを引き受け、ビルマに向かうことになったのであります。即ちこれらの象はイギリスの足枷をふりほどいて東亜解放戦に参加したわけであります。

私は一頭の象を行往座臥肌身離さずもっております。といってももちろん生きているあの大きな象ではありません。鎖の下に繋いだ象牙製の小さな飾り物であります。これは私が去る昭和12年支那事変の勃発する直前欧州へ旅行した途中、インドのコロンボでさるインド人からもらったものでありますが、私がシンガポールを通ってコロンボに上陸し、英米資本主義の飽くなき搾取地としての同地を視察して船に帰った時、今までいなかった一人のインド人が乗っていました。

たくましい堂々たる、しかし色の黒いこのインド人と私はコロンボからイタリアのナポリまでサロンにデッキに昼夜を共にして親しく心の底まで話し合ったのでありますが、いよいよ別れる時そのインド人は私の手を握ってこの象牙の象をくれたのであります。そして曰く、

ーー日本の皆さんは我々アジア人種の兄だと思っております。どうか我ら同胞の盟主日本の力によってアジア10億を英米の魔手から解放してください。

この象には解放を待ちあぐねている全インド人の血が通っているのです。

今やアジア解放の聖戦は赫赫たる戦果とともに雄渾なる規模を以て遂行されております。タイの象がビルマ解放に奮戦しているニュースを聞くにつけても、かつてのあのインド人の顔が目の前に浮かんでなりません。今こそあのインド人に頼まれた大事業を果たすべき秋であります。

私は私の象牙の象を鎖から解いてやろうと思います。これと同時に、全アジア民族から盟主と頼られている我々日本人の責任こそ重大なものだと考えざるを得ないのであります。

第207号 昭和17年2月11日

目次

  • 時の立て札
  • 東久邇宮殿下畏れ多くも国土防衛の指揮に当たらせらる(写真)
  • 雪の監視哨(写真記事)
  • 防空鉄壁陣(写真短信)
  • 帝都の防火陣(写真短信)
  • 大東亜戦争図(戦時地図)
  • 大東亜戦争日誌
  • バターン半島ますます圧迫(写真短信)
  • タイの象も兵站線に ビルマ戦線(絵入り)
  • 新戦場辞典「ニューギニア」(地図・写真記事)
  • 勝利への法律 国民医療法案・国民体力法改正
  • 特配のお砂糖は市電に乗って -東京(写真短信)
  • 食料確保 凍る渚に戦う -富山県(写真記事)
  • 白雪の峯に挑む国防スキー訓練(写真短信)
  • 読者のカメラ(読者投稿写真)
  • 復習室
  • 照準器(マンガ・イラスト)
  • 広告「大東亜戦争国債」

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【ビルマ戦線】日本軍が見た象と戦争【というかインド人との友情?】

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