9pick

少年は次代を背負う国民である。非常時局下に犯罪少年をなくすることこそ、国家の急務であろう。
犯罪現象はこれを個人病理と社会病理の二方面から観察することができる。心身に欠陥があるならば健全な人間とはいいがたい。個人を取りまく環境になんらかの欠陥があるならばこれまた健全な社会とはいいがたい。
一般に保護少年には精神的に欠陥のある者が少なくない。知能劣等、性格異常その他種々の精神的欠陥から不良化する場合は相当数にのぼっている。

自己の能力を顧みず普通人の社会に入った結果、よく同僚と伍して行くことができないために不正な手段を弄したり、仕事に興味を失った結果家出浮浪を事とするに至る。また少年で猟奇的犯罪を犯した者のうちいわゆる性格異常少年の多いことはあえて多言を要しないであろう。

社会病理学的には保護少年を家庭、学校、および一般社会の三方面から観察することができる。家庭欠陥としては、まず出生関係を挙げることができる。庶子と私生児を出生関係異常なものとすれば、保護少年中にはこういう者が約10.5%ある。同じく人の子として産まれながら父が不明であったり、あるいは故あって父の家に同居することのできない子供は何と言っても不幸に違いない。

また家庭関係の異常、すなわち幼少時に親を亡くしたり継父母を迎えて折り合いが悪かったために不良化する場合も決して少なくない。家庭において不良行為をやった者の中で両親が揃っている者は全体の約半分に過ぎない。その他は片親が欠けているとか、一方が継父母であったり養父母であったりするものである。父母が素行不良であったり常に不和の絶えない家庭であったり、生活に追われ子女の教養にまったく余裕のない家庭には何と言っても保護少年が多い。子供の躾方が寛に過ぎたり、反対に厳に失したりするために不良化する場合も極めて多数にのぼっている。警察で調べられ、明瞭な証拠を突きつけられても、私の子供に限ってそんな間違いはないと信じきっている親もある。
またあまりにも子供に対して躾方が厳格でありすぎた結果、浮浪生活への動機を作り、そのため悪事を重ねるに至った例も少なくない。金銭の取り締まりが不十分な家庭ではいつしか家庭から乱費の傾向が芽生える。初発行為を多くの場合家庭からお金を盗み出して買い食いや活動見物に使うことである。子供が最初に不良化するのは家庭からであると言っても良い。

次に家庭を出て学校に入学するようになると家庭では一人天下であった者ももはや独りよがりは通用しなくなる。優良児に伍して成績を上げられないために卑屈な劣等感を抱きはじめ、学業に対する興味を失い、ついには登校を装って家を出たまま諸所を浮浪して悪事を重ねるに至る。多くの統計では尋常小学校3年頃には既にその傾向が顕れている。

食うためには働かなければならない。学校を卒業した者も、不幸にして学校を中途退学したものもいつかは職業生活に入らなければならない。その職業が本人の性能によく適したものであれば問題はないが、適性を顧みないで就職したり、雇用条件が悪かったり教育上不適当であれば降雨服が破壊されることはもちろんである。保護少年の中にはたびたび転職して大切な修養時代を空しく過ごしたものが少なくない。保護少年中1/3以上は奉公中に不良行為を行っている。なお職業生活に失敗して浮浪生活に入りその結果犯罪を犯したものを考慮に入れる時は職業と不良行為の関係はいっそう密接な関係にあることが窺われる。この点から見ても職業指導は少年保護上まことに重要である。

少年はいかにして道を踏み外すか

<写真右ページ右2枚(映画のスチルより)>
愛児を前にしての夫婦喧嘩が、柔らかい童心にどんな影響を及ぼすだろうか。修身の時間に先生から教わる孝行の教訓も、目の当たりに見るはしたない親の姿には泡のように消えてしまう。
また子供を置いてきぼりにし、あるいは女中任せにして外出しがちな母親を持つ子供の頼りないやるせなさ! 幼ごころの憂悶が少年をパチンコ屋へ、活動へ、そこには悪の温床が彼らを待ち受けている。

<写真右ページ上>
年少な中学生が喫茶店に入ってひとかどの大学生気取りで納まっている。まだ健康な生育を必要とする年頃に不健康な興奮を買っている。こんな所で相談する小さな悪い相談も放っておけばいつの間にか犯罪に陥っていく。
<写真右ページ中央>
浅草6区に隊を組んで絵看板に見入っていく女学生、これがお休みの日にお父様かお母様とご一緒に来たのなら楽しい一日と見られるが、もし一人でも悪いお友達に誘われ荷物を学校の前に預けてきたとしたならばどうでしょう。

<写真左ページ左・左上2枚>
春光うらら、集金の帰り道、騒音にかきむしられた神経を若草の上に放り出せば、空は花霞、春風が耳元で「おい、ちょっとごまかして活動でも見ようよ。懐にはお店の金がうなっているじゃないか」
堤に休む小僧さんも休養しているだけなら「遅かったじゃないか」と叱られるくらいが関の山でも、時と所と場合が最悪の条件に揃えば悪い道に落ち込みうる。方向は辛し、春の陽は誘う。しかも職業が自分の性能に適さないと不良化の因となる場合がすこぶる多い。店の主人も親心が必要だ。

<写真左ページ上(映画のスチルより)>
”唄わしてよ”
小さな子供が夜のバーからカフェーへと生活の糧を求めて歩く。すこやかに育たねばならない第二の国民にこんなことをさせている社会がまず反省して、こうした闇の少女を明るい将来に導かねばならぬ。

<写真左ページ右>
仁愛の法律、少年法を司る少年審判所。不幸まんいち悪の道に踏み入った少年は、どんな労力を払ってももとへ引き戻さなくてはならない。少年法は優しい親心を持ってこれにあたっている。

第9号 昭和13年4月13日

目次

  • 広告「大阪商船」
  • 特集:水産日本 4月13日は水産日/遠洋漁業/水産製造加工工業/缶詰のできるまで/養殖(各種グラフ付き写真記事)
  • 特集:護れ導け第二の国民 少年は如何にして道を踏み外すか/保護少年は如何にして鍛えられるか(グラフ入り写真記事)
  • 今に生きる佐久間艇長の遺訓(写真付き)
  • 28年前の4月15日 第6号潜水艇は沈んだ(写真短信)
  • 自治制発布50周年記念日
  • 海の彼方(写真短信)
  • 広告「理研ヴィタミン」
  • 広告「富士のフイルム 愛国懸賞写真募集」

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