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不眠症

冬の寒々とした夜長を眠られぬままに転々反側(寝返り)して心のみ焦っても眼はますます冴えるばかり、あれこれといろいろのことが次から次へと浮かんできてやがてボーン、ボーンと午前の1時を聞き、2時を聞きようやくにうとうととまどろむ頃にはすでに夜も明け放たれて渋い目をこすりながら起き出さなければなりません。そして終日イライラした不快な日を過ごします。睡眠不足は本当に嫌なものです。一晩の睡眠不足がこのように体を非常に疲労させることでもわかるように、睡眠は我々にとってどうしても必要です。体は眠っている間に昼間の疲労を回復するのです。そして人間は人生の約1/3を眠って暮らします。

ひどい睡眠不足が長く続くと、気分がうっとうしくなって記憶力は悪く、考えがまとまらなくなり、筋肉や目が非常に弱ってきます。

不眠はどうして起こるかと言いますと、普通の人では、神経が興奮した時に起こるのですが、他に病気があってその為に不眠症となることが多いのです。

神経衰弱、精神病、心臓病、動脈硬化症、便秘、胃腸病、甲状腺等の病気やいろいろな痛みのひどい時などです。

不眠の型には寝つきの悪いもの、眠りの浅いもの、早く目が覚めすぎるものがあります。不眠症の治療法といえばすぐに睡眠剤を考えますが、不眠の型によって用いる薬が違います。また長く用いていると習慣性となって睡眠剤がないと眠られないようになり、いろいろの中毒症状を起こしてきますから素人が用いることは危険で睡眠剤は医師からもらうべきものです。薬はできるだけ飲まないようにして治さねばなりません。毎朝水を飲んで便通をよくし便秘のないように平常から気をつけ、日常の仕事は過労に陥らないようにしましょう。食事の時間は規則正しく、夕食は食べ過ぎないようにし、消化の良いものを摂りましょう。お茶やコーヒーを飲みすぎると眠れません。寝しなにアルコールをいっぱい聞こし召して寝るとよい、と言う人がありますが、多くの人はかえって興奮しますからよくありません。寝る前に散歩や軽い体操をするかマッサージ・按摩を受けます。また入浴は非常に効果があります。入浴しない時は足の裏をタワシや乾布または湿布(濡らした布)で摩擦すると相当の効果があります。寝室や寝具は寝心地良いものにかえることも必要です。また毛布で足を包んだり湯たんぽを入れたりして足を温めるとよく寝られることがあります。床に就いたらまず体を窮屈な姿勢に置き、やがてその姿勢に耐えられなくなった時に最も楽な姿勢にかえるとよいと言う人があります。よく眠ろうと思うよりむしろ眠るまいと考える方がよいとも言われています。

どうにも眠れない時でも、ただ横になって目をつむっているだけでも疲労は相当回復しますから、眠れないと言って起き出して本を読んだりしないように静かに寝ていなければなりません。

他の病気があってそのために不眠が起こる時はその原因を取り除かなければなりませんから、早速医療を受けましょう。神経衰弱による不眠は非常に多いのですが、神経衰弱の人は精神が刺激されやすく容易に興奮しますのであまり物事を気にかけないようにして少しくらい眠られない晩があってもそのために起こる害を過大に思って恐怖を起こしてはいけません。一週間も一睡しないと言う人がありますが、実際は自分では気がつかないうちに寝ているのです。

第93号 昭和14年11月29日

目次

  • 広告「旅に求めよ日本の姿 鉄道省」
  • 豊作を御恩に返す秋田米(写真記事)
  • 南の国の小姐さん(写真短信)
  • 君らを迎えに帰ったぞ お土産のアルバムから(写真短信)
  • 海外通信(写真短信)
  • 家庭救急箱その13 不眠症(写真記事)
  • 読者のカメラ(投稿者コーナー)
  • 復習室
  • 広告「新眼科薬 スマイル」
  • 広告「支那事変 貯蓄債権」

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