330pick

国内戦場訓

☆「いつ敵が来るか」ではない「いつでも来い」という覚悟と用意を今こそ固めておく時だ
前線も銃後もない。まさに国土が戦場であり、一億の一人一人が戦闘員である。この戦争では、国土防衛が重要な戦闘力であって、万一にも国民の防衛力が弱かったならば、敵は怯むどころか図に乗って日本くみしやすしと野望を逞しくするのみだ

☆防衛というと非常に消極的に思われるが、とんでもない思い違いだ。敵襲下にあって爆弾が炸裂する、高射砲が唸る、目の前に死傷者が続出する、火の手が拡がるという時に、敢然と防衛するには、よほど強い敢闘精神を持っていなければ、誰しも落ち着きを失いやすいものである。それには普段から「何をすべきか」をよく心がけ、訓練しておけば逆上したりせぬ。「訓練は実戦のごとく、実戦は訓練のように」と言われた東郷元帥の言葉の真意もここにある。
冷静沈着に事に処することは、敵襲後のように一時混乱した時には絶対必要である。関東大震災には常識では考えられぬ話が伝わった。こうした時には流言が飛びやすいものである。ことに敵が我が本土に近接した今日では、敵がいろいろ国民を惑わすような手を打ってくることは当然考えておかねばならぬ。
およそデマは冷静に考えれば「そんな馬鹿なことが」と正体を掴めるものである。自分一人で、家族はもちろん隣組全員を落ち着かせるくらいの自信を持たねばならぬ。

☆ことに当局の措置は絶対に信頼しなければならぬ。当局は平常から犠牲を最も少なく食い止めるために、研究し準備しており、一番妥当な方策で国民に指示し指導する以上、これを信頼するのが国民の義務であるり、国民としても安全な道である。当局の指導に文句をつけ、勝手なことをしようとするのは、国内を混乱させようとする敵の手先となるものだ。
空襲後には平常通り円滑に物資が配給されないことがあっても、今から生活を「常在戦場」そのままの簡素なものに切り替えていけば、常に明るく戦い抜けるのである。「不自由を常と思えば不足なし」と気持ちで原始的な生活に慣れれば、平素の物資の不足はもとより、どんなことが起こっても驚くに当たらない
戦場にふさわしく極度に簡素にした最低の生活のうちに、一億を一つに結ぶものは互いに助け合う精神である。たとえ一つの握り飯でも、奪い合って食べるより分け合って食べれば、腹は太らなくても互いに和やかな気持ちになり、勇気が湧いてくる。

☆元来、敵の空襲には、国民の指揮を阻喪させ、生産を低下させようという目的がある。前に述べたように、我らの戦意が旺盛であり生産力を確保していれば、敵襲は無駄骨に終わる。したがって、災禍にひるまず、再建に突進し、職場を死守しなければならぬ。設備がやられれば、二交替三交替で、工場が全くやられれば他の同種工場へ移って頑張る。また職場を死守するのは工場勤務員だけではない。銀行も新聞社も、警防団員も配給業者も、一丸となって職場を守り通してこそ、工場も平常通り動く。つまり一億が「生産落とすな」と真っ先に考え、焼夷弾、爆弾を始末したら、すぐ職場につき空襲時できなかった分を残業で取り戻す。これでこそ職場が死守されるのだ

 

第330号 昭和16年7月2日

目次

  • サイパン島戦闘経過 在留邦人、将兵と運命を共にす(写真入り)
  • 緊急なる戦局に臨みて 東條内閣総理大臣談
  • 頑張ろう一億決死の覚悟で(写真入り)
  • 壮絶!サイパン白虎隊想像図(絵画)
  • きっとこの仇は討つぞ(写真短信)
  • サイパン殉国の歌(楽譜)
  • 国内戦場訓

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【前線も銃後もない】空襲をかいくぐって残業せよ【戦争末期】

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