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聖戦すでに二年を経過して、支那事変はいよいよ長期にわたる情勢となった。わが国の財政経済はこの長期戦に適応するようその体制をとってゆかねばならない。それには種々の方策が採られているが、国民貯蓄の増加という事が、そのうちでもとりわけ重要な事の一つである。
(略)

郵便貯金は明治8年に創始され、本年5月1日を持って満64年になる。その創立の趣旨はどういうところにあるかというと、個人の福利民福を図るという社会政策的な意味はもちろんであるが、また一方金融政策的産業政策的意味(略)に役立てようということにあった。
こんにちではさらにこの上に戦時経済運営の重要使命を加えることになって、貯金の必要はいよいよ絶対的なものになってきた。

創始以来の郵便貯金は漸進的歩調をたどって、日露戦争後の明治41年末には1億円(預け人員850万人)、(略)大正12年末には10億円(同2,794万人)、昭和10年末には30億円(同4,551万人)、昭和14年7月に至ってついに50億円(同7,785万人)を突破するに至った。

だいたい郵便貯金が40億円に到達するまでには約63年の日数を要したのであって、その増加の相当多い年で、一年2、3億円の増加であったのを、昨13年7月より本年6月に至る一年間においては9億6千万円、約10億円という驚異的な増加を示したのである。ちょうど今までの15年間における貯金に相当する額を、一年で貯金した事になるのである。(略)
郵便貯金がわずか一年間に十億円を増加したということは、その原因として事変にともなう巨額な政府資金の撒布、時局産業の殷賑、農村経済の好況などを挙げ得るとしても、その根源と目すべきものは、大衆の間に澎湃としておこった貯蓄報国熱の熾烈さということに帰さなければなるまい。
(略)
今や我が国は官民を挙げて興亜の大理想、東亜新秩序建設の為に邁進しなければならないときである。したがって今後も引き続き巨額の資金が必要とされ、そのためにはまた可りな国債が発行されるであろう。生産力拡充資金の需要もいよいよ増大するであろう。農山漁村、中小商工業の方面においても長期建設の段階に即応して恒久的な銃後施設が樹立されねばならない。
この秋に当たって、貯蓄報国の心がけを持って一銭でも多く貯金をする事は、銃後のわれわれに負わされた重大な任務でなければならない。

 

第76号 昭和14年8月2日

目次

  • 広告「観光満州」
  • 日英第三次会談を終えて
  • 特集:鍛えよこの夏-国民心身鍛錬運動(写真短信)
  • 北大に学ぶ内蒙の若人(写真短信)
  • 角帽の水兵さん(写真短信)
  • 郵便貯金五十億(図入り・写真記事)
  • ところ変れば(写真短信)
  • マラリア爆撃隊(写真記事)
  • 海外通信(写真短信)
  • 読者のカメラ(読者投稿写真)
  • 復習室
  • 広告「明治の缶詰」
  • 広告「クラブ歯磨」

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