191pick

日用品と言えば私どもが日常の生活に使ういろいろの品物のことでありますが、(略)私どもが日常使っている品物は種類が多くなってきているのであります。

もとよりこのように多くの種類や品物を使っている事はそれだけ生活の程度が高くなった事でありまして喜ばしい事と言えるでありましょう。(略)

しかし私どもはその快さ楽しさに慣れてしまって、これらの品物がどうして作られ、どうして私どもの手に渡るのか、またその品物は本来どんな効用を持っているものであるか、どう使うのが一番良いのかなどと言う事を忘れてしまってはならないのであります。

ことに今わが国が非常に大事な戦をしている事を考えたならなおさらの事であります。また婦人がこれらの日用品を毎日使うのでありますから、婦人にはいっそう次のような事を頭において頂きたいと思うのであります。

臨戦下に使っていけない日用品
<要るものをいつでも買えないといって不平を言うなんてそれでいいのでしょうか>
第一に日用品は大事に使って頂きたいのであります。こんなことは今さら申すまでもない事でありますが、案外実行されておりません。

戦争をしておりますと平時ならば私どもが使って良いものを戦争をするために使わなければなりません。また人でも不足になるのでありますから、ものを作るには非常な苦労をしているのであります。それでも物は不足がちになっているのでありますから、決して無駄がないようにしたいものです。

野菜が手に入りにくいというので八百屋の前に列を組んで大根とネギを買って帰ったが、その大根を食べないでいるうちに悪くして捨ててしまったというようなことはなかったでしょうか。大根の葉がどれだけ栄養があるかという事を考えて、これまで2本使っていたのを、1本で間に合わす工夫をすることこそ、今の時代の婦人の務めであります。

次にこの頃は店に物がなくなったといって不平を 言う人が多いのであります。なるほどこれまで必要な時にはいつでも求められた物が求められないと、つい不平が口に出がちであります。しかしその品物を売っている商人もお客様に満足してもらうようにとずいぶん苦心しているのであります。商人の気持ちにもなって、むしろこれだけの物を売ってもらってありがたかったという心持ちになりたいものです。

種類の多すぎる私どもの日用品
<箪笥だけでも3千種からあるといったらちょっとびっくりするでしょうね>

この頃やかましく言われる事に「商品の単純化」という事があります。この事にも婦人はじゅうぶん注意を払って頂きたいのであります。すなわちできるだけ日常使う品物を単純にしてこれを製造するにも販売するにも無駄のないようにしようとする事であります。

菓子も甘い物と辛い物と種類がたくさんあることが、その時々の好みを満たすのに適しておりましょう。また鍋でも大きな物から小さな物まで揃っている事が、その時々の調理に便利でありましょう。しかしこうすることは色々の無駄があるのであります。これを不自由をせずまた生活の快さ、楽しさを損なわないで済む範囲で整理をしなければならないのであります。

私が関係しております品物に例をとりますと、箪笥について調べてみましたところが、日本中で3千種くらいのものが作られておったという事であります。着物を入れる物だから一種でよいのではないかという極端な話も出そうな品物であります。それではあまりにも生活の快さ、楽しさがなくなります。それだからといって3千種がぜひ必要だとは言えぬのではあります。

このような例は箪笥ばかりでなくて、日用品の中にはたくさんあります。帽子、履物、鞄、袋物など、机、椅子、戸棚、茶碗、箸なども皆そうです。これまでは製造販売する方でも少しでもお得意様を多くしようとしますし、消費者の方ではちょっとした便利さからそれを求めますので、同じ効用を持つ品物の種類は増す一方であったのであります。このようなことはこれからは避けなければなりません。製造し販売する人がそのつもりになっても消費者がその気にならなければこの仕事は難しいのでありますから、消費者の方でよく物の効用という事を頭において、ちょっとした便利さから変わった物を求めるようなことのないようにしなければなりません。

物の効用ということに関連してもうひとつ申さなければならないことは、物を求めます際に、その物は使用に適する品質を持っているかどうかを第一に考えてほしいということであります。安かろう悪かろう、あるいは高かろう良かろうという事はある程度言えることであります。

しかし人々には経済上の都合があるのでありますから、高い物は良いと決まっておっても、それを求めがたい場合もありますから、まずある品物を求めようとする時、その品物に対してどれだけの支出をする事ができるかを決めなければなりません。
ここまでは別に変わったことではありませんが、次に何に目をつけるかということです。もちろん次は品質の善悪で、外観の良否はその次でなければなりません。
ところが私が知人に聞いたところでは往々それが反対になっているとのことです。

着物を求める場合でもまず柄を見て次に品質を見るということがないでしょうか。なければよろしいですが、もし仮にあったとすれば改めて欲しいのであります。そんなことではこの時代の婦人として家庭を預かる資格はないと言ってよろしいでありましょう。

贅沢の追放により代替品の登場
<代用品は駄目だなどとおっしゃる方は胸に手をおいてよく考えてみてください>

『贅沢は敵だ』『簡素の中の美しさ』という立看板を街で見たのは昨年春の頃のことでした。こんなことは言わずと知れたことです。私どもは立看板の立っている時だけその気持ちでいるのではいけないのであります。その気持ちを弛ませないようにつとめなければなりません。
「七・七禁止令」でかなりの広い品物について、高い贅沢とみられる物を売ることを禁止されました。しかし法令で禁止をされない物でも贅沢だとみられるものがまだ街で見られることがあります。これらの品物は買う人さえなければ影を潜めることになることと思います。立看板の文句を毎日頭に入れておくようにしたいものです。

またこの頃は代用品がたくさん売られるようになりました。『使って育てよ代用品』の標語があります。まったくその通りであります。代用品は駄目だと言う声はしばしば耳にします。もちろんいかがわしい物もなくはありませんが、じゅうぶん使用に耐えるものがたくさんあります。もし使い方がまずいために役に立たなかったのであったら、悪口を言う方が悪いのです。
スフ(ステープル・ファイバー)は悪い代用品の例のように言われますが、そういう人が綿布と同じようにタライの中で揉み洗いをしていたとしたらその人はスフに対して恥じなければなりません。

最後に申したいことは婦人の方々がもっと日用品について知識を持っていただきたいことであります。それは何も難しいことではありません。婦人は毎日物を使っているので実験はいつでもできるのでありますから、物を買いそれを使う時に少しの注意力を働かしさえすればよいのであります。またちょっとの時間を都合して毎日の新聞の拾い読みをしてほしいのであります。そうすればどんな品物が良くて、それがどうして作られ、その価格はいかほどであるかはただちにわかります。こうして品物を知ることがこの時代の婦人の手近なご奉公であります。

(商工省物価局日用品課長 増岡尚一)

第191号 昭和16年10月22日

目次

  • 広告「スマイル」
  • 特集:独ソ激戦第一報 モスクワ街道まっしぐら/弾道の下 血と硝煙/灰燼に帰す ソ連精鋭の飛行機と戦車/戎衣につつむ悲哀/戎衣にうける歓呼(写真記事)
  • 日独伊三国同盟成立一周年記念日-北京(写真短信)
  • 国際情勢とデマ 恐るべきは心の動揺
  • 時局解説 食糧に万全の備え 緊急食糧対策とは
  • 生活と映画 戦時下の国民生活《10》
  • 文部省推薦映画「人間エヂソン」
  • 推薦と紹介レコード「小諸なる古城のほとり」「駐蒙軍の歌 伊勢神宮にて」「力だ熱だ」「会津磐梯山 子守唄」「新庄節・会津磐梯山」「旅愁・故郷の空」
  • 婦人と日用品
  • 一寸工夫をこらせば(図入り)
  • 読者の漫画(読者投稿マンガ)
  • 写真週報問答(読者質問)
  • 第四回支那事変軍馬際(写真記事)
  • 第四回文部省美術展覧会-東京(写真短信)
  • 大ドイツ美術展覧会-ミュンヘン(写真短信)
  • 商工省主催 国民生活用品展から(写真短信)
  • 銃後のカメラ(写真短信)
  • 復習室
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