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私たちの生活新体制

-獅子身中の虫-

獅子身中の虫ということがあります。外的には百獣の王である獅子も、その身に潜む虫ーー内敵には苦しむというのです。百戦百勝の戦果を収めてきた日本にも、このような虫ーー内敵はいないでしょうか?

政治の足並みが揃わない、科学や教育も知育に傾いたりめいめいが勝手な研究に走って国家全体の進歩に大きな貢献を致さない。経済も同様に戦争で儲ける事を考えたり、物の値が上がったと言っては売り惜しみ買い溜め闇取引が横行してみたり暴利をむさぼったりする。一般の生活態度も享楽を追ったり華美に傾いて『贅沢は敵だ』と戒めを受けねばならないようなこともある。

これらの悪い虫は、国民の肉体に巣食っているのではなくて、国民の心の中に巣を作っているらしい。そして、この撲滅のためには心に訴え心に響く爆弾のほかに効果を現す物はないでしょう。では、いったいどこを爆撃したら良いでしょうか? 私たちの爆撃目標はどこでしょう?

心の虫の策源地と活躍の舞台は、私たちの日常生活です。爆撃目標はここにおかねばなりません。

– 『贅沢』へ爆弾投下 –

奢侈贅沢品の七・七禁令という爆弾が投下された時、一部には国民の生活の自由を束縛するとか、生活を脅かすとか言った人がいます。心の敵に爆弾が正確に命中した証拠です。

この爆撃に対しては避難すべき防空壕はありません。常に国を思い、日本人を思い、時局を認識した防護服だけが有効なのです。敵性の心を持った人は、いくらか逃げ隠れても爆弾はどこまでも追っかけてゆく一方、この防護服をまとった人はこの爆弾の雨の中でもいつも平気で安全でいられます。

8月1日の興亜奉公日、日本の大都市にこの爆弾の雨が降りました。その爆撃の戦況を申しましょう。
東京では各婦人団体が自発的に街頭に乗り出して、各盛り場で敵性人の発見に努めました。敵性を持った人々には、『華美な服装は慎みましょう。指輪はこの際全廃しましょう』と書いたカードをの催涙弾をまず送りました。効果はてきめんでした。
『どうもすみません。今後改めます』『ついうっかり致しまして』と顔を赤らめる人、『早速改めます。厚かましいですが、私も運動に加わらせてください』とたちまち敵性を捨てた人もありました。
贅沢には標準がないだけに、ことさらに華美な物は別として、平常はついうっかりとしていた人が多かったようです。
しかし『この服装のどこが悪いのですか』『この指輪は安物なのですよ』『私はもう三度も渡されました。ごらんなさいこのカードを』と、まるで蒋介石みたいに頑強な敵性を持った人もいました。こんな人がいるからこそ奢侈贅沢品の禁令も必要なのです。平素から心の防護に努めている人ならこんな禁令などどこ吹く風でしょうし、もっと言えば侮辱かもしれません。

今度は和歌山市を眺めてみます。
ここもカードを渡しましたが、『時局柄派手な身なりは慎みましょう』『奢侈贅沢品はやめましょう』『銃後婦人として本当の姿にかえりましょう』というのでした。
また憲兵隊とも連絡して、遊興、興亜奉公日の不謹慎行為、闇取引などの絶滅とともに、『時局を無視するがごとき服装、パーマネントまたは装身具を所持せる者の根絶を期す』ることとし、こんな敵性人の軍隊や病院への慰問、面会はことごとく断る事にしました。

これと同じ事は大阪市の軍隊でも行われました。
その他大阪では『時局柄、華美な服装や贅沢な持ち物は慎みましょう』『あくどい化粧やパーマネントはやめましょう』『金製品の所持は国民の恥、すぐ政府にお売りください』と自粛の標語を示しています。

名古屋市ではどうだったでしょう。
『戦時下若き婦人の身だしなみ』という表題の下に、『華美な服装と化粧は第一線の勇士にすまぬ』『赤、青、黄、原色模様の極端な取り合わせは着る人の人柄が卑しく見える』『血を吐くような口紅と雀の巣(※パーマネントの事)とは外国のある種の婦人を思わせる』『婦人の夏手袋、夏ショール、皮草履など不要不急の品に国家の尊い資源を乱費してはならぬ』『若い婦人の華美な服装は誘惑の魔手を自ら招く』という印刷物を各家庭や婦人の集まりに配布し、その他、各種の婦人の職場にも呼びかけました。また婦人の会合の案内状には、『贅沢禁止の趣旨に鑑み、指輪、金銀糸入りの衣服、華美なパーマネントは遠慮してください』と記しています。

横浜市でも「銃後女性生活鑑十則」を決したほか、贅沢廃止には『国家総力戦下に華美な服装と化粧は全廃し、思いを第一線勇士並びに傷痍軍人の方々に捧げましょう』『人柄の卑しく見える原色模様や毒々しい服飾は時局をわきまえぬそしりを受け、自ら誘惑の魔の手を招く事になりましょう』『濃き口紅と奇異な結髪は思慮ある婦人の家庭から除きましょう』と掲げています。
(略)

結婚とお葬式の新様式
(略)
世の中にはしばしばでなくとも、その度にとかく無駄が多いものがあります。
それが冠婚や葬祭です。

一生で最も祝福し記念すべき日であったり、最も悲しむべき日であるものですからその心持ちについては厳粛深刻でなければならない事はもちろんですが、近来はその精神以上に外形を飾ったり、単なる形式に流れる傾向が少なくありません。ことに結婚は、一般に虚飾に流れる風がありました。
ではどうすれば結婚の新体制は確立されるのでしょうか。

まず見合い。媒酌人の家庭科それに準じた場所で質実簡素にし、劇場、料亭などで高価な服装で饗応しない事。相性、十二支、日取りなどの迷信を捨て、双方の血統、本人の健康状態を婚約前に詳しく調べる。
結納は儀礼に止め、友白髪、指輪、袴、帯、小袖などは廃止し、鰹節、鯣、末廣、塩物、熨斗、昆布などのうち一種または数種を取り合わせ、適当な一台にして贈る。支度、儀式は合意で簡素にし、衣服、調度の新調は見合わせ、余ったお金は貯金や公債で持参する。調度品の送り込み、行列や衣裳見せはもちろん全廃。
式服は團服か制服、それのない時は簡素なもの一着とする。花嫁は留袖以下で、振袖、打掛、胸模様、式後の色直しはやめる。花婿も平伏に儀礼章程度で、参列者も同様、モーニングはなるべく着ないこと。
(略)
写真もキャビネ八つ切以下、結婚届は式場で作り、結婚の誓詞など記念すべきものは記録して家宝としておくといったやり方です。

(略)
敵は外にもある。しかしもっと恐ろしい敵は心の中にあることを忘れないで・・・・

第132号 昭和15年9月4日

目次

  • 広告「理研ビタミン球」
  • 政府 米の供出に 恩賜の郷倉を開く – 福島県(写真記事)
  • 小広告「米穀供出強調週間」
  • 一本の縄と健康美 – 山梨県都留高等女学校(写真短信)
  • 赤ちゃんのお食事工夫講習会(写真記事)
  • 新民会会長推戴式 – 北京(写真短信)
  • 国民あげて新体制
  • 銃後点描:新体制ののれんを掲げて- 米屋さんの企業合同
  • 新版東亜風土記 – 蘭印の巻
  • 小広告「新刊 爆弾」
  • ふじんのページ:私たちの生活新体制
  • 小広告「列国国勢要覧 昭和十五年」
  • 海外小話
  • 写真週報問答(読者質問)
  • 蘭印へ使いする小林商工大臣(写真短信)
  • 贅沢夫婦よさようなら(写真付き詳説)
  • 表忠塔を築く勤労隊(写真短信)
  • 北支の石炭(写真短信)
  • 読者のカメラ(読者投稿写真)
  • 復習室
  • 広告「明治の茶」
  • 広告「報国債券」

表紙

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【贅沢は敵だ!】戦時下の結婚式とは【国民同士が足を引っ張りあう七・七禁止令】

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